こんちには。
栗太郎です。
もうすぐ僕は作品展へ出るんだ。
だからそろそろ身だしなみを整えておこうと思った。
こう見えても僕は意外とおしゃれなんだよ。
鏡を見て・・・驚いた!
自慢の栗色の肌が薄くなっている・・・!!
僕は「典具帖紙(てんぐじょうし)」という和紙でできている。
典具帖紙はとても薄い和紙なんだ。
僕は時々、美紀さんのお友達と会って挨拶をする。
その時、皆決まって僕をなでてくれる。
・・・どうやら僕はなでられ過ぎたようだ・・・。
でも僕はあわてない。
だって典具帖紙は、補修ができる優秀な和紙なんだよ。
ねえ、美紀さん。
「えっ!?」
「行く行く!!僕ずっと行ってみたかったんだ!」
僕は美紀さんと、僕の材料を買いに行くことになった。
ここはいつも美紀さんが和紙を買っているお店。
「紙の温度」っていうんだ。
今度の作品展の会場はここなんだね。
うわぁ・・・広いなぁ!!
たくさんの和紙が、色の渦みたいだ。
すごい!すごい!どこから見ようかなぁ。
美紀さん、僕の和紙選んでね。
「えっ!?」
「僕が自分で選ぶの!?」
「そんなの無理だよ!!]
「僕は今日ここに初めて来たんだよぉ!」
「ねえ、美紀さん!」
「美紀さんってばぁ!!!」
「・・・・・。」
・・・行っちゃった・・・。
・・・美紀さんは優しそうに見えて、実は厳しい・・・。
僕、ちゃんと見つけられるかなぁ・・・。
和紙ってたくさん種類があるんだな。
見た感じも、触った感じも、色も厚さもいろいろなんだ。
でもみんな僕の仲間だね。
どの和紙なのかなぁ・・・。
これは似た色だけどちょっと違う・・・。
これも違うなぁ・・・。
どれなのかなぁ。
僕の和紙、どれなんだろう。
そうだ!高いところから見てみよう。
あれ?
あそこの棚、いつも僕が見ている和紙に似ているよ。
あったぁ!!
これこれ!
僕の和紙、典具帖紙だよ!!
これでもう安心。
・・・でもなかった・・・。
茶色だけでこんなにあるんだぁぁぁ・・・。
そういえば、美紀さんがいつも言ってたな・・・。
その時々で、できる色が違うって。
和紙との出会いも一期一会なんだって。
1枚選ぶだけで大変なんだなぁ・・・。
でも僕は自分で選ぶんだ。
これかな・・・。
これでいいのかな・・・。
よし、これに決めよう!!
「美紀さ~ん、決まったよぉ。」
「僕、自分で選んだんだ。
大変だったけど、自分でやるって楽しいね。
それからね、僕は今日たくさんの和紙の仲間と話したよ。
僕も同じ和紙で出来ているんだって言ったら、みんな驚いてた。
でもみんな優しくて温かかったよ。」
僕はますます僕の材料を好きになった。
今日は嬉しかったな。
僕の材料の和紙、とっても素敵な紙なんだね。
紙の温度HP
和紙Sweets展ご案内
紙の温度さんに許可を頂き、撮影しております。
「僕の材料を買いに」 記:栗太郎
「しあわせ」 記:栗太郎
はじめまして。
栗太郎です。
先日、高知の展示会場から戻ってきました。
作者の美紀さんは少々お疲れのようだったので、代わりに僕がブログを書くことにしました。
僕については、前回のブログで美紀さんが綴っています。
ブログ「栗太郎」
高知での「紙逢わせ(しあわせ)展」は3週間だった。
僕は会場でたくさんの人と出逢いました。
子供たち、カップル、親子、ご夫婦・・・。
幼稚園のこども達が60人も来た時には、僕もさすがに緊張した。
皆、僕を見て笑っている。
中には大笑いしている人もいた。
どうやら僕は面白いようだ。
だから僕の周りはいつも賑やかだった。
僕はずっと箱の中に入っていた。
「神棚みたい」・・・と、つぶやく人もいた。
ちょっと窮屈だったが、居心地は良かった。
今回の展示は僕の部屋だけじゃない。
書家の可葉さんと、光の切り絵作家の敦美さんとの3人展。
2人とも僕とはお友達。
可葉さんは、どうやら僕のことが好きらしい。
いつも迫力ある表情の可葉さんだけど、僕に話かける時には「くりたろう~」と目じりを下げている。
敦美ちゃんは、すぐ隣の部屋で展示をしていた。
敦美ちゃんの会場は暗くなっているので、座っていると時々眠くなるらしい。
だから目を覚ましに、よく僕のところに遊びに来ていた。
美紀さんは僕を見慣れているせいか、あまりかまってくれなかった。
会場の様子を僕はずっと見ていた。
いつもお掃除してくれる人が来る。
だから会場はピカピカ。
紙の博物館の人たちは、皆温かくて優しかった。
館長さんは僕たちのためによく走り回っていた。
お客さんはにこにこしている人が多い。
お菓子が好きな人が多いのかな。
展示を見ながら「帰りにケーキを買っていこうね。」と話している人もいた。
僕も時々食べたくなるから、その気持ちはよくわかる。
・・・中にはしんみり見ている人もいた。
涙ぐんでいる人もいたのを僕は知っている。
作品って不思議な力があるのかな・・・。
同じ人が、大切な人を連れてもう一度来てくれたりする。
子供がおばあちゃんを連れて。
お菓子好きのご主人が、翌日奥さんを連れて。
きれいなお姉さんが、その日の内にお母さんと一緒に。
そんな時、僕はとても嬉しい。
お客さんと話しながら、美紀さんも嬉しそうだった。
今回は美紀さんの夢が叶った展示だったので、僕にはいつもより幸せそうに見えた。
僕の夢は「絵本作家」。
まだまだ勉強中。
「あきらめずに続けていれば、夢は叶う」と、美紀さんはいつも言っている。
美紀さんは優しそうに見えて、意外と厳しい。
あぁ・・・今回の展示は楽しかったなぁ・・・。
だから帰る時はちょっと寂しかった。
でも11月には名古屋で個展があるので、作品の仲間が増えるから僕も楽しみ。
そうそう、今回僕は会場で、今まで聞いたことがないくらい同じ言葉を何度も聞いた。
美紀さんも毎日言っていた。
その言葉は「しあわせ」だった。
栗太郎
名古屋でもようやく涼しい秋風を感じるようになりました。
秋の味覚「栗」も、これから旬の季節を迎えます。
和紙スイーツの中に、「栗太郎」という作品があります。
もともと半立体の額装作品が、和紙スイーツの主なスタイルなのですが、ここ数年「立体作品」にもチャレンジしています。
初めての洋菓子・立体作品は、モンブラン。
あくまでも和紙を用いて、ただのモンブランを作りました。
ある時、そのモンブランを旅のお供に、光の切り絵作家・酒井敦美さんが四国へ連れて行ってくれました。
酒井さんは、現在高知の「紙逢わせ展」でもご一緒している、素敵な作家さんです。
酒井敦美さんHP
そして現地で撮られた写真がこちら。
酒井さんの素晴らしいカメラの腕前とも重なって、それはまるで生きているかのよう・・・。
立体モンブランは四国の旅で「栗太郎」という、愛らしい名前をつけてもらいました。
その後、和紙スイーツに「栗太郎作品」が生まれ、栗太郎が日々の中でお茶を飲んだり、恋をしたり・・・という、自分でも不思議な世界に広がりました。
時々自分と重ねながら、楽しんで作品にしています。
栗太郎「幼い頃」 栗太郎「ゆっクリ」
栗太郎は只今、高知の展示会場でたくさんの方と出逢いを重ねていることと思います。